ねずみの共感性
共感というのは人間だけが行う行為のように思えますが、実はそうではありません。
サルやイヌにトリ、そしてネズミも共感することが知られています。
それも感情を共有するだけでなく、仲間を助けることが知られています。
どういった種類の共感性を示すのか
感情の共有、慰め、救助行動をすることが知られています[1]
今回はラットが救助する行動に注目したいと思います。
※ねずみのうちでかいものをラットと言います。
ねずみはねずみを助ける
ラットは拘束されたラットを助けることが知られています。[2]
ラットの閉じ込められたチューブの蓋を鼻でどかして助けます。
また、水に浮かべられたラットを助けることも知られています。[3]
(ラットにとって水に浮かべられるのはストレスであるということが知られています)
チョコよりも仲間を優先することがある
同じ部屋にチョコと拘束されているラットがいる時、ラットを助けるためにチョコを食べるのを後回しにしたり我慢することが知られています。[2]
"馴染みの深い"血統のラットを助ける
自分と同じ血統の初対面のラットは助けますが、異なる血統だと助けないことが見られています。
ただし、これは自分と同じ血統のラットと一緒に過ごした場合です[2]。
自分と異なる血統のラットと過ごした場合は、先ほどとは逆に一緒に過ごした血統の知らないラットは助けますが自分と同じ血統の初対面のラットは助けないことが見られました。[2]
ただし助けることをめんどくさがることも
助けなくても暗い部屋に行けば苦しんでいるラットから逃れられる場合は助けるのに時間をかけてしまうことが見られています。[4]
別のラットを助けるのは苦しんでいるラットの苦しみを共有し、相手と自分の苦しみを除くために行うという考えがあります。[3]
この考えに沿うと、暗い部屋に行ける時に時間をかけてしまったのは、助けることの他に自分の苦しみを除くより楽な方法ができてしまったからと考えられます。
今回は人間だけでなくねずみも共感し、そして助けるということをすることを紹介しました。
今回の記事で動物実験による心理学の研究に興味を持っていただければ幸いです。
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1. de Waal FBM, Preston SD. Mammalian empathy: behavioural manifestations and neural basis. Nat Rev Neurosci. 2017;18:498–509.
2. Ben-Ami Bartal I, Rodgers DA, Bernardez Sarria MS, Decety J, Mason P. Pro-social behavior in rats is modulated by social experience. Elife. 2014;3:e01385.
3. Cox SS, Reichel CM. Rats display empathic behavior independent of the opportunity for social interaction. Neuropsychopharmacology. 2019.https://doi.org/10.1038/s41386-019-0572-8.
4. Carvalheiro J, Seara-Cardoso A, Mesquita AR, de Sousa L, Oliveira P, Summavielle T, et al. Helping behavior in rats (Rattus norvegicus) when an escape alternative is present. J. Comp. Psychol. 2019;133:452–62.