人肌を感じるマンション
初めて見ると何だこれ?となりますよね。
調べたところ、どうやら大晋メゾネ北山通というマンションみたいです。
京都市の北山通にある松ヶ崎の東側にお洒落なお店が集まったところがあるのですが、その一角で見つけました。
有機的なファサード
この建物の正面部分(ファサード)はよく見ると人が一列に並んだ様子を横から眺めた形になっていて、有機的に感じました。
ポップで暖かみのあるマンション
側面から眺めると、ファサードの肌色に加えてベージュ色、そしてビビットな赤・青・黄色が使われており、ポップな印象を受けました。
有機感とポップ感を組み合わせ、人肌を感じる様な暖かみのある住環境が意図されていたと思われます。
上図の様な中庭空間が建物の中心付近に存在します。
この空間を憩いの場として暖かな生活が営まれているのではないでしょうか。
ポストモダン建築
この建物を分類すると、ポストモダン建築に含まれると考えられます。
1980年あたりに流行した様式です。
□や△などのモダンな抽象的形状を多く用いながらも、多様な装飾を盛り込んだ建築様式です。
他の温度感のある建物 2選
この建物をデザインしたのはユキタイエシー一級建築士事務所の方々です。
この方々は、他にも暖かみのある建物を設計されています。
そんな建物を2点を紹介します。
その1つが大阪市のベイエリアにある森ノ宮医療大学の看護学科棟です。
こちらも大晋メゾネ北山通の様にポップなデザインとなっており、国試対策などの勉強の際の支えとなっているのではないでしょうか。
もう1つが神戸市の北野坂にあるLelienという花とワインのショップです。
外壁に沢山の植物が用いられており、癒しを感じながらお花やワインを楽しめそうです。
建物というとビルの様な無機質なものが多いですが(特にK大薬学部 笑)、これらの様な有機的な建物があると嬉しくなりますよね。
居心地のいい水玉模様の図書館
この建物はなんでしょうか。研究所?美術館?実は図書館なんです。
今回紹介するのは、石川県金沢市の金沢海みらい図書館という建物です。
私が訪れた際は金沢駅からバスを何本か乗り継いで訪問しました。
その途中で、卸売り場直送の寿司屋やおいしいカップケーキ屋に寄りました。
水玉模様の外観
話は逸れてしまいましたが、この図書館の外観は真っ白な直方体に水玉状に窓が開いた形になっていて、開放的な内部空間が想像できます。
今回はこの建物の魅力を建物の機能およびフォルムの面から紹介したいと思います。
読書空間としての機能性
壁に空いたパンチ状の穴からたくさんの光が差し込んでいます。また天井は高く広々とした空間が広がっています。
これらのおかげで、リラックスして読書が出来る空間が形成されていると感じました。
フォルムのコントラスト
またよく見ると、細い柱が天井を支えているのが見えます。大きな直方体であるこの建物を、華奢な柱が支えているというコントラストにも魅力を感じました。
フォルム的に美しいだけでなく快適に読書も楽しめる、こんな図書館がもし近くにあれば毎日通いたいと思いますよね。
関連の建物
この建物をデザインした人はシーラカンスK&Hというチームの方で、他にも居心地の良い空間の建物を設計されています。
こちらの建物も窓を大きく取っていて、光溢れる空間を形成されています。
さらには、木材ベースの天井や床となっていて、差し込んだ光と合わさって暖かみのある空間が想像できます。
私の通う大学院は光があまり入らず通う気が減ってしまうので、シーラカンスK&Hさん設計された様な建物だったらなと思ってしまいます。
生きた廃墟カフェの建物
こちらは廃墟の様に見えるかもしれませんが、実はカフェなんです。徳島の海際にある「大菩薩峠」というお店です。
今回この店を紹介するのは、食レポではなく建物のことを紹介したいためです。
右の大きな四角形の部分は窓も少なくアーチが大きく開いているのに対し、真ん中・左の部分は窓も多く風通しが良く、アーチも小規模になっています。このコントラストが上手く調和されている所に魅力を感じます。
また、建物の外観は部分部分で崩れている上にツタも這っており、どこか物悲しい感覚を覚えます。一方で、内部のカフェ空間は温かみに溢れていました(店内撮影禁止でしたので写真はありません)。この様な点にかえって暖かみを感じ、建物が生きている様にも感じました。
抗うつ薬として医療用医薬品となった危険ドラッグ:ケタミン
ドラッグと医療用医薬品は縁遠いものと考えている方も多いと思います。
しかしながらいわゆるドラッグが医療用医薬品になることがあるのです。
その例としてケタミンが治療抵抗性うつ病に対する治療効果の治験を経て、医薬品として承認されたことを紹介します。
治療から取り残されていた治療抵抗性うつ病
うつ病は抗うつ薬(SSRIなど)の開発によって治ることも多くなりました。しかしながら、治療抵抗性うつ病の患者は様々な薬を処方されたにもかかわらずそのどれもうまく効いていません。その患者には自殺を試みた人も多く、重篤な精神疾患と言えます。
治験の既に済んでいたケタミン
話は変わりますが、医薬品開発のプロセスはざっくりと分けると有効成分の開発→臨床試験(いわゆる治験)→販売と言えます。
有効成分の開発も臨床試験も年単位でかかり、そのうえ多くの有効成分はドロップアウトしますから、医薬品開発はコストの高い事業と言えます。
またそのため、今の患者に必要な薬をすぐに開発するのは難しいのです。
ただし、これら段階を飛ばせる薬がありました。
それこそがいわゆるドラッグの一つであるケタミンです。
※もちろん臨床試験と安全な用量用法の検討は行われました。
アンダーグラウンドでうつ病に効くと知られていたケタミン
ケタミンは薬をキメている人たちの界隈の中ではうつ病に効くということが既に知られていました。
ケタミンでうつ病から解放された人のトリップレポート(ドラッグの体験談)によると、抗うつ薬だけでなくいコカインやアンフェタミンなど様々なドラッグもキメていたにもかかわらず効かなかったうつ病を抱えていました。その人はある日ケタミンがうつに効くと聞き、半信半疑で試してみたところ、本当に効いたそうです。[1]
(参照元によると服用すると世界の全てが正しい感覚を覚え、内なる無意識の声がお前はうつを治す力を持っているとささやいたそうです。次の日起きたら心の暗闇が取り払われ、3-4年間で最高の日となったそうです。その効果は1日だけではなく、3週間続いたそうです。)
※「ketamine trip report」でぐぐるとそこらへんでキメたひとの話が読めてしまいます笑
このように、既に存在する有効成分が実臨床で使われまくっていて、どういった中毒性と治療効果を発揮しどのような症状に効くかが既にわかっていたのです。(データとしてではありませんが)
ですのでケタミンを抗うつ薬にするには後は治験でデータとして有効性を示し、安全性の高い用法用量を検討すればよかったのです。(それらの過程も大変だったとは思いますが)
共感性を高めると知られていたMDMA
またMDMAも現在自閉症に対して共感性を高める効果の薬として研究が進んでいます。MDMAも同じことが言え、どういった中毒性と治療効果を示すかが既にわかっていたのです。[2]
実臨床で使われているケタミン
そして現在、アメリカではSpravatoとしてケタミンの点鼻薬が承認を受け実際に治療抵抗性のうつ病患者に対して医療用医薬品として用いられています。(飲み薬との併用が承認されています)[3]
依存性薬物ですので、乱用防止・他人への販売譲受の防止のため、病院で医療従事者の前で服薬するように指定されています。
維持期には1~2週間に1回の点鼻だけでよく、すぐに抗うつ効果を示します(投与後2日)。
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今回はケタミンが治療抵抗性うつ病の治療薬となったことを紹介しました。
もちろんだからと言って大麻などのドラッグの合法化を推進するわけではなく個人的には反対です。
今回は代わりとなる薬がなく、ケタミンの承認によって救える症状が重篤であったため承認によるリスクよりもベネフィットが大きく上回ると考えられたために病院での使用に限って承認されました。
危険ドラッグが医薬品となった興味深い例として読んでいただけたら幸いです。
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[1] A Powerful Depression Treatment Ketamine by DepressedLoser123, Erowid Experience Vault, https://erowid.org/experiences/exp.php?ID=113191
[2] Danforth AL, Grob CS, Struble C. Reduction in social anxiety after MDMA-assisted psychotherapy with autistic adults: a randomized, double-blind, placebo-controlled pilot study. Psychopharmacology. (2018) 2018:9. doi: 10.1007/s00213-018-5010-9
[3] National Institute of Health, Label: SPRAVATO- esketamine hydrochloride solution, DailyMed, https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=d81a6a79-a74a-44b7-822c-0dfa3036eaed
ねずみの共感性
共感というのは人間だけが行う行為のように思えますが、実はそうではありません。
サルやイヌにトリ、そしてネズミも共感することが知られています。
それも感情を共有するだけでなく、仲間を助けることが知られています。
どういった種類の共感性を示すのか
感情の共有、慰め、救助行動をすることが知られています[1]
今回はラットが救助する行動に注目したいと思います。
※ねずみのうちでかいものをラットと言います。
ねずみはねずみを助ける
ラットは拘束されたラットを助けることが知られています。[2]
ラットの閉じ込められたチューブの蓋を鼻でどかして助けます。
また、水に浮かべられたラットを助けることも知られています。[3]
(ラットにとって水に浮かべられるのはストレスであるということが知られています)
チョコよりも仲間を優先することがある
同じ部屋にチョコと拘束されているラットがいる時、ラットを助けるためにチョコを食べるのを後回しにしたり我慢することが知られています。[2]
"馴染みの深い"血統のラットを助ける
自分と同じ血統の初対面のラットは助けますが、異なる血統だと助けないことが見られています。
ただし、これは自分と同じ血統のラットと一緒に過ごした場合です[2]。
自分と異なる血統のラットと過ごした場合は、先ほどとは逆に一緒に過ごした血統の知らないラットは助けますが自分と同じ血統の初対面のラットは助けないことが見られました。[2]
ただし助けることをめんどくさがることも
助けなくても暗い部屋に行けば苦しんでいるラットから逃れられる場合は助けるのに時間をかけてしまうことが見られています。[4]
別のラットを助けるのは苦しんでいるラットの苦しみを共有し、相手と自分の苦しみを除くために行うという考えがあります。[3]
この考えに沿うと、暗い部屋に行ける時に時間をかけてしまったのは、助けることの他に自分の苦しみを除くより楽な方法ができてしまったからと考えられます。
今回は人間だけでなくねずみも共感し、そして助けるということをすることを紹介しました。
今回の記事で動物実験による心理学の研究に興味を持っていただければ幸いです。
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1. de Waal FBM, Preston SD. Mammalian empathy: behavioural manifestations and neural basis. Nat Rev Neurosci. 2017;18:498–509.
2. Ben-Ami Bartal I, Rodgers DA, Bernardez Sarria MS, Decety J, Mason P. Pro-social behavior in rats is modulated by social experience. Elife. 2014;3:e01385.
3. Cox SS, Reichel CM. Rats display empathic behavior independent of the opportunity for social interaction. Neuropsychopharmacology. 2019.https://doi.org/10.1038/s41386-019-0572-8.
4. Carvalheiro J, Seara-Cardoso A, Mesquita AR, de Sousa L, Oliveira P, Summavielle T, et al. Helping behavior in rats (Rattus norvegicus) when an escape alternative is present. J. Comp. Psychol. 2019;133:452–62.